アーチ>。<ティンパヌム>。<連続性>。三次元で空間を描く金属製の大きな渦巻きを思い起こす形。それは、2003年に他界し、幅広い分野で活躍したミラノの優れた芸術家カルロ•ラムースの壮大な彫刻作品の名称である。
37年間もパルマ市の倉庫に放置され、工場廃棄物のように忘れ去られていた。今回、完全に修復され、組み立てられ、ミラノのトゥリエンナーレ近代美術館で展示されることになった。
消えたラムースの作品のおとぎ話のような物語。屋根裏部屋で偶然見つかった秀作が、競売で最高値がついたというような典型的なストーリーとはちょっと違う。2009年にレプッブリカ紙のパルマ紙面が、ヴィレッタ墓地裏の空き地に妙な金属製の残骸が存在する事を取り上げたのが、そのきっかけとなった。
誰一人として想像できなかったが、それは、大きな彫刻の一部であった。雑草の中で錆びて、泥とセメントに覆われていた。パルマにカルロ•ラムースの作品が展示された年の1971年以来、その場所にずっと眠っていたのです。
あまりにも大きな彫刻の運搬に問題があった。アーティストとパルマ市役所との間に対立が生まれ、訴訟に至ったのでした。作品は解体され、一時的に市倉庫に移された。そして、忘れさられた存在となったのです。2003年にアーティストの他界後、彼の芸術遺産の後見人でさえどこに消えたのかも、
新聞に取り上げられるまで知らなかったのです。
ここで、情熱が舞台に上がる事になる。芸術に対する情熱が。
ミラノ出身の建築家でエンジニアのヴァルテル•パチャイダー氏は、カルロ•ラムースの彫刻やデッサンの広範なコレクションを父親から相続した人間である。彼自身、家族と友好関係にあったアーティストを良く知っていた。彫刻家が亡くなってから、パチャイダー氏は彼の作品を保護し奨励する事を決心。不可能に思えた事へ賭けをしてみたのだ。パルマで失われた大きな彫刻を復元する賭けに出たのだ。
2011年の年末。パチャイダー氏はミラノを出発、そして、パルマに行く。作品の状態を自分の目で見て、持ち帰えりたかったのだが。ヴィレッッタの倉庫に到着、目にした瞬間、意気消沈。酷い状況であった。金属製部品は錆び汚れ、全てがごちゃ混ぜ状態。
パチャイダー氏は、あきらめずに前に進む事を決断。知人でミラノ近郊の金属工場の持ち主の協力で、回収可能なものを救い出した。残骸は倉庫に収納した。そして、変貌する。磨かれ修復され、本来の輝きが戻ってくる。作品<アーチ>、作品<ティンパヌム>、作品<連続性>がよみがえる。パチャイダー家が保管していたデッサンのおかげで、この三作品がよみがえったのです。第四の作品<小さな苦悩>は、一つ部品が不足している。第五の作品<発展>は、行方不明。
よみがえった三作品の運命は、本来の場所に戻る事。作品<ティンパヌム>は、ミラノのトゥリエンナーレ近代美術館創立80周年記念日の5月10日に公表されることになっている。その機会の常設展で、パチャイダー氏個人コレクッションの一つ、耐熱性素材でできた彫刻が贈呈されることになっている。作品<継続性>も引き続き公園内に設置展示される。作品<アーチ>は、9月にリモルディ美術館がラムース没10周年を記念して組織するラムース個展開催の機会に、コルティーナ•ダンペッツォ市の中央広場に設置展示されことになっている。それは、ヴァルテル•パチャイダー氏にとって大きな喜びである。『カルロ•ラムースは画商と全く会おうとしなかった。生存中、芸術分野での幅広い交際、素晴らしい交流があり、国際的に良く知られていた。他界後、彼の考えを伝えられる人間がいなかったため、忘れられてしまったのです』と、パチャイダー氏は語ってくれた。
ヴァルテル•パチャイダー氏と彼の妹ペグ女史は、このような事態再発を避けるため先頭に立って活動している。芸術家ラムースのサイトwww.carloramous.itを開設運営している